手術日を目前にした木曜日の夕方、残業もほどほどにいつもより早めに帰宅しました。あまり意識はしていなかったもののどこかで「明日が手術・・・」と思うと、あの時は心のどこかでやはり緊張していたように思います。
家路についてからあれこれと明日の手術に向けて、まるで初めて海外旅行にでもいくような感覚で、クリニックに着くまでの予定を綿密に頭の中で考えていました。例えば、手術日当日は入浴もシャワーもできずもちろん顔も洗えないので、どのタイミングでメークを落としクリニックへ急行するか・・・。通常、会社の業務は午後7時までなので、8時の手術にどう間に合わせるか・・・。
何時の電車に乗ればいいのか、電車の中で他の乗客にノーメークの素顔をなるべくさらさず目的地へたどり着くには・・・などなど、正直、手術にはまったく関係のない準備に心を砕いていました。それと同時に、事前検査の申し込みを行った時よりもさらに、視力の回復した自分の眼で見る新たな世界が、現実味を帯びて胸にせまってきました。その興奮と手術時の不安とがその日の夜は頭の中で行ったり来たりしていたのです。とにかく、その日は明日の手術に備えあまり眼に負担をかけないよう、インターネットやテレビ、読書などほとんどせずに早めに寝ることにしました。
そして、当日の朝。いつもどおり、午前7時には起床し、9時に出社。刻一刻とせまり来る「その時」を心でカウントダウンしながらの業務でした。結局、午後7時の定時ではなく、30分早い6時半に仕事を切り上げ帰宅。自転車で10分のところにある自宅に一旦戻り、30分でシャワーを浴び、ノーメークの素顔に生まれ変わって、午後8時の手術に間に合わせるべく、7時20分ごろのぎりぎりの電車に飛び乗りました。私は、長い髪でなるべく顔が目立たないようにし眼鏡をかけ、車両の隅に腰を下ろして、残りのカウントダウンに心臓をドキドキさせていました。そして、私の乗った地下鉄は、新宿の都庁前をめざし夜の街を進んでいきました。それはあたかも、私を手術台へと運ぶ専用電車に乗っているような感じでした。
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